2022/04/26 訴えの利益が無くなったため控訴を取り下げました

<4/28 バックフィット訴訟控訴取り下げ>

 バックフィット訴訟の控訴取り下げについてご報告いたします。
 大山生竹噴火(DNP)の噴出規模引き上げによるバックフィット命令にかかわる許認
可のうち、保安規定変更認可を4/7付で原子力規制委員会が行いました。
 また、その前に規制委は使用前確認の省略を決めていることから、本件バックフィッ
ト命令にかかわる手続きは終了したこととなり、訴えの利益がなくなったことから、名
古屋高裁に控訴の取下書を提出し、4/28付で受理されました。

 本裁判はこれにて終了となりますが、裁判でこれまで指摘をしてきました火山灰濃度
の過小評価は是正されておらず、原発の安全が確保されたとは言えない状況です。取り
下げに伴い、原告・弁護団は声明を発表しましたので、こちらをぜひお読みください。


名古屋高裁高浜原発バックフィット停止義務付け訴訟
控訴取下げに当たって、安全の確保されていない原発を
稼働させないように闘い続ける旨の声明

             2022年4月28日
  高浜原発バックフィット・停止義務付け訴訟原告団及び弁護団

1 高浜原発3、4号機のバックフィット停止義務付け訴訟に関し、当原告団及び弁護
団は、2022(令和4)年3月10日になされた名古屋地方裁判所民事9部(日置朋
弘裁判長)の不当判決に対して、その不当な内容を上級審において正すべく、同月23
日、名古屋高等裁判所に対して控訴していたところである。

2 同判決は、福島第一原発事故の教訓を踏まえず、原発に要求される安全の水準を、
福島第一原発事故以前の平成4年伊方最高裁判決よりも後退させて、バックフィット制
度を骨抜きにし、新たな「安全神話」を復活させる、根本的な誤りを含むものであった
。
  停止を義務付けるための主張立証責任を我々住民側に負わせている点、原子力規制
委員会に広汎な裁量を認める結果となっている点、我々の主張を曲解し、あるいは無視
している点など、その内容は、福島第一原発事故後の司法判断として信じ難いものであ
り、到底承服できないものである。

3 もっとも、この訴訟では、我々は、鳥取県大山の噴火規模の見直しを踏まえ、設置
変更許可、工事計画認可、保安規定変更認可及び使用前確認を終えるまでの間、原発の
使用を停止することを義務付けることを求めていたところ、2021(令和3)年5月
19日に新たな設置変更許可がなされていた。
  その後、本年2月15日に工事計画認可がなされ、同年3月7日には使用前確認を
行わない旨の指示がなされた。そのため、保安規定変更認可がなされれば、訴えの利益
がなくなる状況にあった。そのような中、本年4月7日には保安規定変更認可もなされ
たことから、本件訴訟については、訴えの利益がなくなったこととなる。

4 しかし、これで本件原発の安全が確保されたわけではない。
  我々は、この訴訟において、大気中の火山灰濃度が大幅な過小評価となっているこ
と、そのため、原発の冷却機能を維持できなくなるおそれがあることを主張していたと
ころ、本判決は、これにまともに答えることなく、濃度の問題は保安規定変更認可の中
で審査されていること、これらの手続を完了させなければ、運転の前提条件を満たさな
いと判断することが示されていることを理由に、我々の請求を退けていた。要するに、
濃度の過小評価があれば、保安規定変更認可の中で是正されるだろうと考えていたので
ある。
  ところが、原子力規制委員会は、我々が主張していたとおり、この点を是正するこ
となく、濃度の過小評価を見過ごしたまま保安規定変更認可を行った。原子力規制委員
会は、裁判所が考えていたような適切な判断をする機関ではないことが明らかとなると
ともに、本判決が、いかに非現実的な判断をしていたかがますます明らかになったとい
える。
5 本件訴訟については控訴を取り下げざるを得ないが、大山噴火の影響を受ける若狭
湾周辺の原子力施設は依然として安全が確保されないままである。高浜原発1、2号機
及び美浜原発3号機の老朽原発については、現在、名古屋地方裁判所において、設置変
更許可処分等の取消訴訟が係属中であり、本件訴訟で指摘した問題は、この訴訟の中で
徹底的に明らかにしていく。
  我々は、本判決のように、福島第一原発事故によって生命や人生を奪われた多数の
人々の思いまでも踏みにじる不当な判決には絶対に屈しない。老朽原発訴訟も含め、当
原告団及び弁護団は、今後も安全の確保されない原発を稼働させないよう、闘いを続け
る所存である。

                    以上


【経過】
原子力規制委員会
2022年4月7日
関西電力(株)に高浜発電所の原子炉施設保安規定の変更を認可
https://www.nsr.go.jp/disclosure/law_new/RTS/300001153.html

2022年3月7日
関西電力(株)に高浜発電所第3号機及び4号機に係る使用前確認の省略を指示
https://www.nsr.go.jp/disclosure/law_new/INRF/160000908.html

2022年2月15日
関西電力(株)に高浜発電所第3号機及び第4号機の設計及び工事の計画を認可
https://www.nsr.go.jp/disclosure/law_new/RTS/300001111.html

2021年5月19日
関西電力(株)に高浜発電所1号炉、2号炉、3号炉及び4号炉の設置変更を許可
https://www.nsr.go.jp/disclosure/law_new/RTS/300000903.html

関西電力(株)に大山火山の大山生竹テフラの噴出規模の見直しに係る原子炉等規制法
第43条の3の23第1項の規定に基づく命令書を手交
令和元年06月19日
http://www.nsr.go.jp/disclosure/law/RTS/300000615.html

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