10/3 口頭弁論報告(高浜1.2号第24回+美浜3号第22回)

 

民事9部裁判官202210月ss報告集会録画はこちら → http://toold-40-takahama.com/top/movie/

 

 

 

■裁判官がまた交替!

今年4月の異動で、左陪席裁判官(向かって右)が、若林憲浩裁判官から岩谷彩裁判官に交替しましたが、さらに10/3の期日から、左陪席が岩谷彩裁判官から柏戸夏子裁判官に交替。柏戸裁判官は東京地裁の東電刑事裁判で東電幹部に無罪を言い渡した裁判体の左陪席だった方です。

名古屋地裁のホームページを見ると、岩谷裁判官は変わらず民事9部にいらっしゃるので、原発に詳しい裁判官を迎えたということなのでしょうか!?

裁判所の事情はわかりませんが、規制委の審査の違法性をしっかり理解していただき、東電福島原発事故の教訓を踏まえた厳正な判決をお願いします!

■この裁判で初めて、被告・国側がプレゼン。テーマは中性子照射脆化について

<高浜事件>

 原発の心臓部である鋼鉄製の原子炉容器は取り換えができません。長年、中性子を浴びてもろくなることを中性子照射脆化といい、当訴訟での重要な争点の一つです。

 高浜原発1号機は脆性遷移温度(金属が一定の温度以下になると粘り強さを失って脆くなる境界の温度)が99℃と全国の原発で最も高く、緊急冷却時の原子炉容器破損が心配されています。

 これまでの裁判で、中性子照射脆化を調べるための監視試験片(原子炉容器に同じ鋼材の試験片を入れておいて定期的に取り出して試験をする)の原データを原子力規制委員会が見もせずに、関電の評価結果をうのみにして認可していたこと、しかも、裁判でようやく関電が出してきた原データを見たところ、驚くべき手抜き試験であったことが判明しました(詳しくは、デンジャラスくん通信No.20ご参照)。中性子照射脆化では、そのほかにも決められた設定で評価していないなど数々の問題を指摘してきましたので、国も少しは危機感を覚えての今回のプレゼンとなったようです。

 でも、まず、国の代理人がマイクから離れて早口で要旨をひたすら読み上げるので、聞き取るのがたいへんで、聞き取れた内容も東電福島原発事故の前に戻ったかのような楽観論に唖然としました。

 例えば、大破断LOCA(ロカ:冷却材喪失事故)が起きて非常用冷却水が一気に注入された場合、原子炉容器に深さ10mm、長さ60mmの半だ円表面欠陥があると想定して原子炉容器が破壊されないかを評価する決まりになっているのですが、「大破断LOCAは、大口径の配管が瞬時に破断し、原子炉容器内の1次冷却水が急速に流出することを想定した事故ですが、世界中を見ても、これまでにこのような事故が発生した例はありません。」として、大破断LOCAを想定した評価自体が保守的だとアピール。いや、自らの規制権限不行使でレベル7の過酷事故を起こした国に、大破断LOCAは世界で起きていないから、それを想定するだけでも保守的と言われましても全く説得力はありません。

 また、想定する欠陥についても、深さ5mm程度の欠陥は検査でわかるから、10mmは保守的と主張。しかし、2020年に大飯原発3号機で、前回の定期検査で把握できなかった重要配管の亀裂がかなり進展していて、関電が進展予測をごまかして(1サイクル13ヶ月で評価すべきところ、1サイクル12ヶ月で評価)、ギリギリ大丈夫だからと配管を取り替えずに運転しようとして規制庁に叱られた問題がありました。見つけるべき大きさの亀裂を見逃したのか、検査で把握できない極小の亀裂が急激に進展したのか、どちらにしても、そのような事態も当然想定すべきです。

 被告のプレゼンの要旨やスライドもぜひご覧ください。 ↓

第24回口頭弁論 20220928 口頭弁論陳述要旨 (32頁 20.6MB)
・・・・・・・・・20220929 中性子照射脆化に関する主張の要旨(スライド28頁)

     

■蒸気発生器の耐震評価のための加振試験の中身もひどかった

減衰定数(げんすいじょうすう)問題ってどういうことでしたっけ?一緒に思い出してみましょう。

 減衰定数は耐震設計で用いられる数値で、地震による揺れが収まる程度を表します。数値が大きいほど揺れが小さく、揺れが早く収まる、つまり、原発の機器・配管にかかる力が小さいことを示します。ですから、数値を小さく設定するほど、厳しい条件で耐震設計を行っていることになります。

 規制委が定めた「耐震設計に係る工認審査ガイド」に基づけば、蒸気発生器の減衰定数は1%(揺れが大きく継続時間も長い)に設定すべきなのに、それでは耐震性をクリアできないからと関電は3%を適用。しかし、それが認められるには実機(高浜原発1、2号機)で加振試験を行って、減衰定数が3%以上あることを検証しなければ適用できないと規制委も認識していたのに、関電は実機での加振試験を行わず、代わりに行うとしていた美浜原発3号機の加振試験と同2号機の打撃試験も、美浜3号機の加振試験を行ったのみ。しかも、関電自ら「加振方法の改善の余地がある」と報告するような不十分なものでした。それでも規制委は、工事計画認可後、使用前検査の段階で実機試験、減衰定数の確認を行えばいいとして、工事計画認可をしてしまいました。

 このこと自体が違法であると主張してきましたが、今回は、美浜3号機で行った加振試験の中身について、理系出身の藤川誠二弁護士が自ら検証し、問題だらけの試験だったことを明らかにしました。( 準備書面(96) 準備書面(96)の陳述要旨スライド )

蒸気発生器図

 

問題1:地震の揺れは下から来るのに、加振試験では、蒸気発生器の上部を横から揺らしただけ。振動の入力位置が変われば、揺れの減少具合は変わるのではないか?

 名古屋のテレビ塔で考えてみると、テレビ塔を地面から揺らした場合と、上部の先端部分から左右に揺らした場合では、全体の揺れ方、揺れの減少具合が違うだろうことは容易に想像できますよね。

問題2:減衰定数3%は蒸気発生器3点支持の場合の数値。3%を2点支持の場合に使えるかを確認する試験なのに、試験方法が3点支持に近い条件を作っている。

高浜1、2号機は蒸気発生器のサポートが上部サポートと下部サポートの2点支持(3点支持のものは中間サポートが加わる)。サポートが少ないということは揺れやすく、減衰定数は揺れが大きくなる1%を適用すべきなので、加振試験によって3%でも大丈夫(揺れが小さい)ということを確認しなければいけません。

しかし、この加振試験は、蒸気発生器上部に加振機を押し当てて加振し続けるため、まるでその部分が固定されるような状態になってしまい、3点支持に近い状態に。これを2点支持の評価とするのは無理があります。

問題3:対象機器を押さえつけながら加振する「反力型加振機」を用いたことがあまりにも不自然。

関電は耐震工事完了後に実機で行う試験では、「慣性型加振機」を用いた加振方法を用いるとしています。「慣性型」は、押し当てるのではなく、蒸気発生器に取り付け、振動させて止めて、揺れの減衰状況をみる試験です。

同じ試験方法をとらなければ、比較ができないのに、なぜわざわざ違う方法をとるのでしょうか。しかも、過去に高浜原発4号機で行われた加振試験では「慣性型」を使った実績があるのに。問題2の3点支持効果との関係が疑われます。

問題4:実際の地震の揺れと大きく違う特定の一方向からの単一振動数の試験。

この加振試験では、蒸気発生器の上部を一方向から、単一振動数の加振入力しかされていません。しかし、実際の地震の揺れは前後左右上下の振動が含まれ、振動数もさまざまな周波数帯域の波が含まれています。

問題5:実験回数が少なすぎる。

変位量(ひずみレベル)の違いによる減衰定数の違いを把握するためとして、「小レベル」「中レベル」「大レベル」の加振条件としていますが、試験回数は、Aループ、Bループともに「小レベル」と「中レベル」は1回しか行われておらず、「大レベル」でも3回しか行っていません。

これでは回数が少なすぎて、実験回次ごとの誤差がどの程度であるのか把握は困難です。特に「小レベル」と「中レベル」は、どの程度のばらつきがあるのか、誤差範囲は全くわかりません。耐震工事完

了後に実施する実機試験では、「計6回以上取得されたデータの下限値を評価に用いる減衰定数とする」とされていることからも、明らかに少ないです。

問題6:加振試験結果が3%を満たしていない。ばらつきが大きい。

試験結果は、Aループの「小レベル」で1.7%、「中レベル」で2.8%であり、3%を満たしていません。この結果からすれば、本件工事計画認可は審査基準を満たしておらず違法とされるべきです。

被告は、基準地震動の揺れに襲われたら、大レベル以上の変位となるので、大レベルの結果のみを評価対象とすればいいとしていますが、保守的な評価と言うなら、小レベルや中レベルの結果も基準を満たすべきですし、大レベルの試験もわずか3回で、その結果も、Aループでは3.2%~4.0%、Bループでも3.2%~4.1%とかなりのばらつきがあります。試験回数を増やせば、3.0%未満の数値が出る可能性も高いです。

基準地震動が過小評価の上に、蒸気発生器の耐震の試験でこんなに恣意的なことをしていたとは!

今回は、藤川弁護士がいたから明らかにされましたが、私たちが気づけない違法・不当な試験や評価、審査がほかにもいろいろあった、そして、これからもあるのだろうと想像してこわくなりました。

■中野宏典弁護士が、午前の高浜事件で主張のまとめを、午後の美浜事件で、火山灰濃度の問題について陳述しました。

・大山で過去に起きたことがわかっている噴火の中で最大規模の大山倉吉噴火(DKP)を想定すべきなのに、それより小さい大山生竹噴火(DNP)想定で済ませてしまっていること。
DKPは、ピナツボ噴火の4〜5倍、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ噴火の6〜7倍とみられる。産業技術総合研究所の山元孝広氏のシミュレーションによれば、火山灰は高浜原発で100cm近く、美浜原発でも50cmを超える可能性がある。(関電のDNP想定では、高浜原発27cm、美浜原発22cm。)
今の火山学では噴火予測はできないので、DKPも考慮しなければならない。

・火山ガイドの不合理性とさらなる改悪。

火山ガイド策定当時の議論を見ると、規制庁が運用期間中(=敷地に核燃料物質が存在する期間のこと。運転期間ではない)の火山の活動可能性評価について大きな不確実性があることを認識し、破局的噴火が低頻度として無視できるようなものではないことを認めつつも、モニタリングの実力を誤解し、噴火の時期や規模を相当前の時点で相応の確度で予測できることを前提として火山ガイドを作成したことがわかる。

しかし、その後、モニタリングの実力を誤解していたことが明らかとなり、原発差止訴訟で火山ガイドが不合理とされ、原発を止めざるを得ない状況が出てきた。

その中で、原発を差し止めないようにするため、裁判所が持ち出してきたのが「社会通念論」。一般社会が破局的噴火を想定して対策していないから、原発における破局的噴火リスクも受け入れているのだとするもの。しかし、火山ガイド策定当時の議論では、更田委員が、「例えばそのエリアが、言葉は非常に厳しいですけれども、全滅してしまうから、じゃあ、あってもなくても関係ないと、そうではないのだろうと思います。やはりそういったところは、原子力発電所のような施設というのは、立地不適切と考えるのがふさわしいのだろうと思っています。」との認識を示しており、社会通念を持って破局的噴火を無視するような考えはなかった。

ところが、規制委も裁判所の「社会通念論」に便乗して、事実上の火山ガイドの改悪である「基本的な考え方」(2018年)を提示し、巨大噴火は低頻度事象で、これを想定した法規制や防災対策は原子力分野以外では行われていないから、原発における巨大噴火リスクも社会通念上容認されているとした。

そして、これをもとに規制委は2019年に火山ガイドを正式に改悪。従来は、敷地及び敷地周辺で確認された火山灰の噴出源が「将来噴火する可能性が否定できる場合」に考慮対象から除外するとしていた規定を、「これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合」とした。例外として考慮対象から除外できる場合を広く認めており不合理。また、その運用期間中に発生する可能性が十分に小さいかどうかを評価する場合に、『「火山活動に関する個別評価」は、設計対応不可能な火山事象が発生する時期及びその規模を的確に予測できることを前提とするものではなく、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価するものである。』としている。将来予測ができないのに、将来予測を現在の火山の状態で評価?全く論理的に破綻している。

・被告は、DKPは大山の噴火履歴のうち高噴出率期でのみ発生すると考えられ、低噴出率期に戻ったされる現在において、DKP規模の噴火の可能性は十分低いとしているが、DKP以外は高噴出率期と低噴出率期の双方で発生とも言っている。また、DKPというたった1事例が高噴出率期だったからと言って、大規模噴火は低噴出率期には起こらないとするのは無理がある。ジャンケンで「1回勝ったから、今後も勝つ」というのと同じレベル。それに、規制委が低噴出率期とする約40〜60万年前にも高噴出の時期がある。

・非常用ディーゼル発電機の空冷フィルタが火山灰で目詰まりすることへの対策として、フィルタ交換という人的対応に依存することは非保守的。

しかも、引き上げられたDNP噴出量に比して、想定する火山灰濃度が過小評価。フィルタの目詰まりは早くなり、とても交換が間に合わない。

・火山灰層厚が倍以上になったのに、建屋等の荷重への対策がなく、従来あった裕度を食いつぶしてしまっている。

( 準備書面(93) 準備書面(94) 準書(93)(94)陳述要旨スライド )

■新聞記事からもあらためて思う本訴訟の重要性

北村栄弁護団長は、今回の記事の特徴として、原発施設への武力攻撃リスク、また、6月に出された避難者訴訟の最高裁判決、それと対照的な7月の東電株主代表訴訟判決を取り上げました。

2011年の東電福島原発事故当時に原子力委員会委員長代理であった鈴木達次郎氏は、原発施設が武力攻撃には耐えられないこと、高浜原発3、4号機のようなウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使っている場合、プルトニウムを含むMOX燃料は盗まれ、転用される危険性も高いことなどを踏まえて、「電力不足への懸念から原発の再稼働を求める声もあるが、長期的に見れば、原発依存はリスクが高いということが、今回のウクライナのケースからもわかる」と指摘しています。

( 準備書面(92) 準書(92)陳述要旨 )

20221003報告集会写真政府が老朽原発の積極的再稼働のみならず、60年を超える運転の検討まで打ち出している今、本訴訟は非常に重要な訴訟となるので、裁判所の英断に期待しています。

 

 

■「主張整理表」もできました。 

高浜:https://bit.ly/3VJg8WN 美浜:https://bit.ly/3F3VOZQ

原告側で作った各違法性の主張について整理した表をもとに、裁判所の要請により争点毎に原告と被告の主張の要旨を記載する形式で、「主張整理表」が作られています。延長認可や設置変更許可など処分ごとに分けて、各争点がどのような法令にどのように違反しているのか、していないのか(被告側は今後の主張予定も)、書き込まれた一覧表で、原告・被告が加筆修正して随時更新されています。これがあれば、判決も書きやすそうです。


<今後の期日>

2022年12月16日(金)名古屋地裁2号法廷

10:30~高浜1.2号機 第25回口頭弁論
14:30~美浜3号機  第23回口頭弁論

2023年3月13日(月)名古屋地裁2号法廷

10:30~高浜1.2号機 第26回口頭弁論
14:30~美浜3号機  第24回口頭弁論

2023年6月9日(金)名古屋地裁2号法廷

10:30~高浜1.2号機 第27回口頭弁論
14:30~美浜3号機  第25回口頭弁論

 

 

 

 

 

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